アラビア語

アラビア語は難しい?その特徴や文法――学習における2つの「補助輪」

こんにちはKoichiです。今回は私が3年半ほど取り組んでいるアラビア語について使用面からお話ししたいと思います。

この記事の結論

①文字を覚えるのは簡単、頑張ったら3日で覚えることができる
②母音記号という「補助輪」・アルファベット順という「補助輪」、2つの補助輪を用いて勉強を始めることになるので決して難しいとは言えない
③この補助輪を外してからアラビア語は難しくなる、だが楽しい、奥が深い

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1. アラビア語ってどんな言語?

「アラビア語ってどんな言葉なの?」――こんな質問をよく受けます。

しかし、この質問はアラビア語を勉強すればするほど答えにくいものです。

 

それほど深く勉強していないのであれば

「アラビア語は20か国以上で話されていて、話者も2億3000万人国連公用語の一つとされていて、マイナーじゃないメジャーな言語なんだよ!」とでも答えるのでしょうか(筆者がかつてそうでした)

今となっては何と答えてよいのかわかりません。これはアラビア語自体が持つ多様さによるものです。

なぜアラビア語について語るのが困難なのか?-地方によって大きく変わってくる

アラビア語にはフスハー(正則アラビア語と呼ばれる、一種の共通アラビア語)とアーンミーヤ(地域で話される「方言」ともいうべきもの)があります。

フスハーには古典アラビア語現代標準アラビア語(MSA: Modern Standard Arabic)があり、現在、教育・出版・報道等で用いられるのは、後者のMSAになります。

イラク戦争の取材で世界的に有名になったアルジャジーラ放送局で流れるアラビア語もこのMSAです。

一方、アーンミーヤには膨大な種類があり、その数を正確に述べるのは難しいでしょう。筆者留学した地域は「パレスチナ方言」と一括りにされることが多いですが、実際は30キロほど離れた町でも微妙な違いがあります。

例えば、ヨルダン川西岸、北の街Nablusでは「いくらですか?」を

アッデーシュ(ʼaddēsh)

といいますが

同じ西岸、中部の街Ramallahでは

カッデーシュ(kaddēsh)

といったり

南部地中海沿いのGazaでは

ガッデーシュ(ghaddēsh)

と言ったりします。

フスハー・アーンミーヤの差についても、実際の使用はあいまいで、フスハーが随所に混じった「知識人の口語」というのもあり、その境界は存外あいまいなものです。

しばしばフスハーは書き言葉でアーンミーヤは話し言葉という説明がなされますが、これは誤りです。SNSの発展によりメッセージのやり取りが常態となっていますが、このときにアーンミーヤを使用することがたくさんあります。

小説でもセリフでアーンミーヤが使われることがあります。アーンミーヤの持つ地域性が小説に活力と臨場感を与えます。

また方言がその地域でしか通じないとの認識も誤りです。例えばエジプト方言はエジプトで制作された映画・ドラマがアラブ世界に広く知れ渡ったことにより、様々な地域で解されるようになっています。

このような複雑さがあるアラビア語ですが、日本で学ぶアラビア語はほぼ全て、フスハーの現代標準アラビア語(MSA)です。

本屋に並んでいるアラビア語書籍のほとんどがMSAを扱ったもので、方言について書かれたものはごく少数しかありません。

 

2. アラビア語はなぜ難しいのか(あるいは難しくないのか)

「アラビア語って難しいでしょ?」――これもよく聞かれる質問です。私はいつも「何が難しいと思います?」と質問を質問で返します。

するとたいていの人が「文字!」と答えます。なるほど、アラビア語の文字(اللغة العربية←こういうやつ)は確かに見慣れないですね。ただ、私が学習した実感からすると

アラビア語は難しい→Yes. とても難しい。だが奥が深い。
アラビア文字が難しい→No. 覚えたらおしまい。3日で叩き込める。

というのが答えです。

アラビア語の難しさは文字ではありません。あらゆる言語についても、文字が一番難しいなんてことは普通考えられません。文字は最初のステップ。海水浴に例えるならば、自宅のドアを開けてカギを閉めるくらいの段階です。山登りに例えるならば、自宅のドアを開けてカギを閉めるくらいの段階です。

ではアラビア語の難しさはどこにあるのでしょうか。2つの視点から見てみましょう。

 

①一般のアラビア語には母音記号がない。

アラビア文字もアルファベット(アラビア語では الأبجدية アブジャディーヤといいます)ですが、そこには母音がありません。例えば

ك(カーフ)という文字がありますが。これはkの音を表します。しかしこれだけでは、kaなのかkiなのかkuなのかが分かりません。そこで母音をはっきりするために生み出されたのが「母音記号(الشكل シャクル)」です。

 

アラビア語には3つしか母音がありません(正確を期すならば長母音ū,ī,āや二重母音ai,auがある。また方言はこの限りではない)。

aを表す母音記号は、文字の上側にチョンとちっちゃい線が加えられます。

ك←كَ ・・・見えますか?この記号のおかげでkをkaと読めるようになりました。

 

この調子で、iはどう表すでしょうか・・・。

ك←كِ ・・・見えますか?文字の下にaのときと同じようなちっちゃい線がありますね。

これがiを表す母音記号です。これでkiと読めます。

 

uはこうやって表します。

ك←كُ ・・・見えますか?文字の上に量を表すℓのような記号がついていますね。kuです。

 

単語の末尾の母音をどう読むか。これがアラビア語の文法的な機能を決める大きな要素となっています。語末をaと読むのかiと読むのかuと読むのか、誤解を恐れずに言えばこのことが日本語における助詞のような役割を果たしているといっても過言ではないでしょう。

 

しかし、多くのアラビア語文では、この母音記号が省略されています。

 

アラビア語文の多くは、語の持つ文法的機能の「しるし」となる母音を示す記号を、なんと省略してしまうのです。

このせいで私たちは、文法的な知識や単語の形態に関する知識をもとにして、母音を自分で補っていく必要が生じるのです。

 

例えば

كَتَبَ مُحَمَّدٌ كِتَابًا مُمْتَازًا (ムハンマドは素晴らしい本を書きました)

kataba muḥammadun kitāban mumtāzan と母音記号を頼りに読めるとしても、母音記号なしでは、文法知識がなければ。

كتب محمد كتابا ممتازا

ktb mḥmd ktb mmtz (上のローマ字転写から母音を抜いています) としか読めず。母音は判別できません。

母音記号がない状態で、母音を正しく読むためには文法的知識と、言葉の形態に関する知識が必要です。

 

だから、アラビア文字を覚えても、母音記号が付いていない文章を読むことはできないのです。

「アラビア文字を覚えている」ことから、「母音の付いていないアラビア語の文章を音読できる」までには、大きな距離があることが理解できたと思います。

 

ただ、安心してほしいのですが、一般的な文法書や簡単な読み物教材ではこの母音記号はしっかりと付されています。

そこでは母音記号という一種の補助輪を用いながらアラビア語の勉強を進めることになります。

いつかはこの補助輪を外すときが来ます。それはどんなときかは筆を改めて紹介したいと思います。

 

②辞書を引くのが難しい

 

アラビア語に近い人や、すこしアラビア語をかじったことがある人は、「アラビア語は辞書を引くのが難しい」と漏らすこともあります。

 

ここでいう辞書は、「語根引き」と呼ばれる方法で調べたい言葉を探す配列方式を採っているものを指します。

 

語根とは何か。これがアラビア語の面白さの白眉ともいうべき概念です。

 

كِتَابٌ kitābun 本

كِتَابَةٌ kitābatun 書くこと

مَكْتُوبٌ maktūbun 書かれた

مَكْتَبٌ maktabun オフィス

مِكْتَابٌ miktābun タイプライター

 

上記の単語5つは全て「同じ語根」から派生して生まれたものです。ローマ字を見てみるとすべての単語に共通した子音が見えてきませんか?

そうですね、kとtとbです。あと、nと思った方も多いでしょう。この語末のnは「限定されていないことを表すn」で、英語の不定冠詞a/anに相当すると考えてください。なので、今回は含みません。

これらk-t-bの3つが上記5つの単語の「語根」ということになります。

「語根引き」の辞書で 「مَكْتَبٌ maktabun オフィス」を調べるためには以下の手順を踏みます。

①この単語の冒頭のmは接頭辞(単語の頭に加える追加の文字)と判断する

②3つの語根はk-t-bだと判断する

③辞書でk-t-bの項目を見つける

④調べたい単語をその項目の中から見つける

結構面倒くさいですよね。しかもこの「語根」の考え方を理解するためには、動詞に関する文法を一通り押さえておかなければなりません。つまり、初級文法を勉強し終えてはじめて辞書が引けるようになるということです。

「語根」が簡単には判別できないような単語もあり、辞書をスムーズに引けるようになるためには、相当な時間がかかることになります。

そういう点から、アラビア語の辞書を引くことは、難しいというよりは、引けるようになるまで時間がかかるものだと言えます。

ただ、安心してほしいのですが、初学者向けの辞書では単語が「アルファベット順」に並べられているものが売られています。例えば「مَكْتَبٌ maktabun オフィス」という単語を「アルファベット引き」の辞書で調べるためには

①冒頭の子音mの項目群を開く

②調べたい単語を見つける

他の言語の辞書と同じ手順で調べることができます。この方法なら、文字を覚えたその日から分からない単語を調べることができます。

しかし、このアルファベット順の辞書もやがては卒業すべき時が来ます。

分からないアラビア語を語根引き辞書で調べるということは、単に意味を知るだけにとどまらず、アラビア語単語の形態に関する理解を深めることにつながります。

アラビア語単語の形態――つまり単語の形――はアラビア語において一つの学問領域を作り上げるほど重要なものなのです。これもまた筆を改めて書きたいと思います。

何はともあれ、アラビア語の学習ではアルファベット順の辞書は補助輪のようなもので、それを外せばアラビア語は難しくもなるけれども、より面白くなるともいえるのです。

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まとめ

長文になってしまいました。まとめると、アラビア語学習は

今回のまとめ

①文字を覚えるのは簡単、頑張ったら3日で覚えることができる
②母音記号という「補助輪」・アルファベット順という「補助輪」、2つの補助輪を用いて勉強を始めることになるので決して難しいとは言えない
③この補助輪を外してからアラビア語は難しくなる、だが楽しい、奥が深い

 

 

それではまた次の記事でお会いしましょう。

 

 

 

ABOUT ME
Koichi
2018年9月 同志社大学文学部卒 2016年8月~2017年5月 An-Najah National University (Palestine)留学 日本語・アラビア語・英語でコンタクト可 プロフィール写真はイェルサレムにあるダビデの塔 ご連絡は knikaido0814@gmail.com

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